引っ越した家には庭が有った。
幅6m、奥行き3mうち軒下1mなので、実質使えるのは2m×6mなのだけど、南側は隣の家の駐車場に面していて日当たりは申し分ない。
これはイイ、花壇を作ろう、と地面を掘ったら、掘るたびに石が出て来る。しかも、石だと思ったものはよく見ると、砕けたコンクリートの塊だったりする。
どうもこの家は、建築残土の上に建てられているらしい。
ちょっと花壇を作っただけで瓦礫の小山が一つできた。ゴミだ。ゴミの山だ。どうしよう。
でもこれを眺めているうち、不思議な事に、これらが貴重な戦利品みたいに見えて来た。
家に客を招き、ひとしきり挨拶をしてからリビングのカーテンをめくる。すると目の前に瓦礫の山が見える。
「ねえ見てください。 これ、この庭掘ったら出て来たんですよ。ふふふっ」
と、見せびらかしながら戦果を語る。
いいじゃないか。これは大人の楽しみだ。そう思い始めるとニヤニヤが止まらない。
それで、それらの瓦礫で花壇の縁取りを作ってみた。作業は日が暮れて夜までかかったけれど、並べられたコンクリートの塊たちを見ていたら凄くカッコいい。これは現代アートだと思った。
次の日の朝、家の前を見ると、平らな赤い地面に石のようなものがずらっと並べられているのが見えた。家の窓から見るそれは庭と言うより・・・まるで遺跡の発掘現場だ。
人は一日経つと冷静になるものだと思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿